中学数学の小部屋

中学の数学についていろいろ書きます。

真面目に解くと損をする問題

これは令和5年度の埼玉県の高校入試(学校選択)の数学の問題とその模範解答です。

解く過程を記述させる問題なのですが、その模範解答で、なぜ平面が点Cを通るのかの説明が全くなかったのが気になりました。

模範解答で説明されていない以上、この説明をしなくても減点されないということなのでしょうが、その「なぜ平面が点Cを通るのかは説明しなくてもいい」という判断を、解答者はどうやってすればよかったのでしょうか。

真面目にその理由を説明してしまった解答者は、その手間の分不利になってしまいます。記述問題を出題するなら、何を書くべきで何なら省略できるのか解答者が判断できるようにするべきです。


そして、これは令和5年度の神奈川県の高校入試の数学の問題です。

四角形ABCDは台形なので、AD∥BCかAB∥DCのどちらかなのですが、真面目に解くなら、AB∥DCなら矛盾が発生することを確認してAD∥BCだと判断する必要があります。しかし、図版の見た目からAD∥BCだとすぐ判断した解答者が大勢いたと推測できます。真面目に解いた解答者は矛盾の確認にかかった手間の分不利になります。まあそこまで大きな手間ではないので大した差にはならないのですが、それでも、問題文に「AD∥BC」を入れるだけで解消できるのなら、そのようにするべきだったと思います。


それから、これは令和4年度の茨城県の高校入試の数学の問題で、底面の半径2cm、母線の長さ6cmです。(この問題は他にも指摘したいことがあるのですが今は省略します。)

正解者のほとんどはいきなり下図左のような図をかいて赤い線の長さを考えたと思います。

ですが、ひもが底面を通る可能性を問題中で否定してないので、厳密にいえば、解答者には底面と側面を通る下図右のようなケースも検討する義務があります。実際、OPが2cmでなく5.9cmならこっちの長さを答えるのが正解です。

これらの長さを比較する必要がありますが、実はスマートな方法が分かりませんでした。中学数学の範囲では不可能なのか私が見落としてるだけなのかどちらなんですかね。ただ数値計算で無理やり比較した結果、側面だけを通る方が短かったです。

これも解答者が真面目に解いた場合、大きな負担(あるいは不可能なこと)を強いることになります。現実的にはこのような解答者はほぼ0で実害は無いのでしょうが、作問者がそれに甘えるのはいい姿勢ではないと思います。

結月ゆかりの中学生に解説する微分積分②について

結月ゆかりの中学生に解説する微分積分② - YouTube

②では最初に微分係数を求める計算をしました。この計算は、一見hで約分してからhに0を代入しているように見えます。しかし、それは本来数学ではやってはいけない計算のはずです。なぜやってはいけないはずの計算がOKなのか動画で丁寧に説明しました。残念なことに、世間の微分の解説では、この点の説明をごまかしていることが多いです。

また、導関数の説明もしましたが、ここでは微分係数を文字aで表してからaを元の変数xに置き換えるという回りくどいことをしました。理由は、「微分係数を文字で表す」と「その文字は元の変数の文字と同じである」の2つの情報が同時に出ると視聴者が混乱するのではないかと心配したことと、「xをxとする」というのはなんとなくモヤッとすることの2つです。ただ、あまり意味がなかったかもしれません。

接線の説明も入れました。微分係数をグラフの接線の傾きとする考えは好きではないのですが、やはり微分の話をするなら触れないわけにはいきませんよね。教科書には、接線は「グラフ上の2点を結ぶ直線が片方を片方に限りなく近づけたときに限りなく近づく線」と定義されていたのですが、「限りなく近づく線」の説明が難しいので採用しませんでした。接線の定義を「微分係数を傾きとする直線」としたかったのですが厳密には正しくないようですので、その方針は変えずにぼかした表現にしました。

円の面積の微分も入れました。微分の話をするなら欠かせませんよね。分かりやすいパフォーマンスです。4/3πr^3を微分すると4πr^2になることに感動してほしいです。

積分はすみませんが、当分先になりそうです。理由は作成中のデータが壊れてしまったことと動画の練習のためショート動画を中心にしたいことの2つです。

 

結月ゆかりの中学生に解説する微分積分①について

youtubeで中学生に微分を解説しています。そのシリーズの動画の①について話します。

結月ゆかりの中学生に解説する微分積分① - YouTube

微分は、接線(接線については動画の②で説明しています)の傾きを求める計算と言われることが多いです。しかし、動画でも言いましたが「増加量0での変化の割合」を求めるとした方がいいと思っています。接線の傾きは、その関数のグラフをかいてそれに注目する場合でしか意味がありませんが、そうでない場合も多いはずです。また、微分係数の定義を直訳すれば「増加量0での変化の割合」になるので、それを求める計算とした方が明快だという意味もあります。

また、関数の連続性(グラフがつながるか途切れるか)を判別する感覚と瞬間の速度の存在の認識は、特に教わらなくても多くの人が持っているはずだと考えていて、それらに頼った説明をしました。グラフのつながりを使って極限値の説明をしましたし、微分の導入では、接線の傾きの話ではなく瞬間の速度の話をしました。

それから、世間にある微分の説明では、極限値の意味の説明がおざなりになっていることが多いのが気になっていました。例えば、「hを0に限りなく近づけたときの○○の値」といった類の説明ですね。微分の説明では極限値の意味は重要で時間をかけて説明するべきだと思っています。この動画ではそのようにしました。そして、極限値の説明をするなら、グラフの視覚的イメージを使うのがいいと思っています。ΔtとΔp/Δtのグラフを見せたのはそのためです。

いろいろ工夫をしながら丁寧に説明をしたので見ていただけるとうれしいです。